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W ガラスにはどんなものがあるか

 木製サッシの表面的に大きな面積を占めているのがガラスです。
 窓に求められる性能は、ガラスによって大きく影響されます。
 ここでは、ガラスの種類と特性および選択の目安について述べることとします。

1 ガラスの種類

ガラスの種類

特  性

A基本的なガラス 
(単板ガラス)
一枚構成のガラスで、後述の「合わせガラス」、「複層ガラス」はこれを組み合わせたものす。
フロート板ガラス 普通の透明板ガラスで、フロート法と呼ばれる製法でつくられもので、我が国で生産されている建築用板ガラスは、型板ガラスと網入板ガラスを除きほとんどこの種類です。
型板ガラス 板ガラスの表面に凸凹の模様をつけ、光を拡散することによって視線を遮る機能を持たせたガラスです。
強化ガラス

ガラスに特殊な熱処理等をして、強度を上げて割れにくくしたものです。フロート板ガラスと比べて強度は3〜5倍です。ガラスが割れた場合、細かい粒状になります。


強化ガラスの破損状態

熱線吸収板ガラス ガラスをわずかに着色して、日射熱を吸収し室内への侵入を和らげたものです。
熱線反射ガラス ガラスに金属の薄い膜をつけて、日射を外部に反射させるようにしたものです。
低放射ガラス 「LowーEガラス」とも言い、特殊な金属膜を表面にコーティングしたガラスで放射率が低いのが特徴です。通常は複層ガラスとして使います。
B防火対応のガラス

火災による延焼の恐れのある部分の、開口部に使用するガラスです。ただし、防火性能はガラスだけでなく、窓の他の部材と組み合わせて対応が求められるため、メーカーやサッシの種類よって使用できるガラスが決まっているので注意が必要です。

網入板ガラス ガラスの中に金網を入れたもので、火炎によってガラスにひびは入りますが、金網によってガラスが保持されて飛散しないため一定時間の延焼を防止することができます。
耐熱ガラス 通常のガラスとは違う特殊な成分、製法によって造られているガラスで、火炎に対して割れにくくなっているため一定の時間の延を防止することができます。網入板ガラスより割高です。
C合わせガラス

二枚の板ガラスの間に、特殊な樹脂をはさみこんで協力に密着させたガラスです。ガラスが割れても破片の飛散を最小限に抑え、物がぶつかった場合など貫通しにくいのが特徴です。また、特殊な膜を挟み込むことによって、様々な機能のガラスが造られています。


合わせガラス

D複層ガラス

ガラスの断熱性能を向上させるために、二枚の板ガラスの間に乾燥空気を封入した「空気層」を設けたガラスです。空気層の厚さによって断熱性能が異なります。組み合わせるガラス、封入方法、周辺材料等によって様々な種類があります。一般的なフロートガラス板を使用したものの他に次のような商品があります。


複層ガラス

低放射複層ガラス 低放射ガラスを使用した複層ガラスで、フロート板ガラスだけのものより断熱性が向上します。太陽熱を取り入れながら室内の暖かさを外に逃がさない「高断熱タイプ(高断熱複層ガラス)」太陽熱をなるべく逃がさない室外に反射し、なおかつ室内の暖かさを外に逃がしにくくした「遮熱タイプ(遮熱複層ガラス)」とがあります。


合わせガラスの複層ガラス


遮熱タイプの複層ガラス

トリプルガラス

「3重ガラス」とも言われガラス3枚と空気層2からなる複層ガラスです。ガラス2枚のものより断熱性が高くなります。
ウオームエッジ複層ガラス 複層ガラスで、通常ガラスとカラスの間の空気層を保持している「スペーサー」と呼ばれている部分は普通アルミでできていますが、これを断熱性のいい樹脂等にしたものです。
ガス入り複層ガラス 複層ガラスで、空気の代わりにより断熱性の高いガス(アルゴン等)を封入したものです。
注)ガラスの種類の呼称は、(社)日本サッシ協会編「表現と用語の統一に関する指針2000年」を参考にした。

2 ガラスの選び方
ガラスは、省エネルギーや安全性の面を中心に選択します。

耐風圧の検討(ガラスの厚みの検討)
ガラスは大きくなると、風を多く受け割れやすくなります。したがって、ガラス面積が大きい場合は、厚いガラスを使用する必要があります。
ただし、「強化ガラス」を使用すれば、フロートガラスに比べて薄いガラスで設計風圧を満足させることができます。詳しくは、ガラスメーカーにお問い合せください。
ガラスの厚さを計算で求める方法は、「ガラスの厚さを計算で求める方法」で説明しています。

断熱性と結露防止の検討
下表に、ガラスの「熱・光学的」性質を示しました。
省エネの観点から、寒冷地では断熱性の高い、つまり熱貫流率の低い「低放射複層ガラス」を選択することになります。複層ガラスは、結露防止の点からも有効です。「次世代省エネ基準」との関係は、「次世代省エネ基準と木製サッシ」を参照してください。

安全性の検討
店舗の入口等安全性が要求される部位には、割れにくくしかも割れても安全ないわゆる「安全ガラス」を使用することが推奨されます。「強化ガラス」や「合わせガラス」がそれに該当します。

防犯性の検討
空き巣の侵入経路の半分以上がガラス破りという統計があります。網入りガラスや複層ガラスは1枚のフロートガラスより侵入しにくいということはいえますが、防犯効果はあまりありません。防犯には、通常よりも厚くて、特殊な膜を使用した「合わせガラス」を使用するのが効果的です。

資  料


ガラスの熱・光学的性質

ガラス仕様 ガラス構成 光学的性能 熱的性質
可 視 光 % 日 射 % 日射熱取得率 熱貫流率
W/m2・K
反射率 透過率 反射率 透過率 吸収率
普通複層
ガラス
3+A6+3 14.9 82.1 13.4 73.7 12.9 0.79 3.4
3+A12+3 0.79 2.9
普通三層複層ガラス 3+A12+3
+A12+3
20.5 75.0 17.6 63.8 18.6 0.71 1.9
低放射複層
ガラス
(高断熱タイプ)
3+A6+L3 17.3 75.6 15.5 62.1 22.4 0.74 2.7
3+A12+L3 0.75 1.9
低放射複層
ガラス
(遮音タイプ)
L3+A6+3 16.9 68.7 29.4 44.4 26.2 0.50 2.6
L3+A12+3 0.50 1.8
普通板ガラス 3 8.2 90.3 7.7 85.6 6.7 0.88 6.0

凡例 A:空気層、L:低放射ガラス 無記号:フロートガラス


次世代省エネ基準と木製サッシ
建設省は、平成11年3月、地球規模の温暖化問題に対応するため、「住宅に係るエネルギー使用の合理化に関する設計及び施工の指針」(次世代省エネルギー基準)を告示しました。
その中の、窓等開口部断熱基準を整理したのが下の表で、性能基準(熱貫流率)と仕様基準の二本立てになっており、そのどちらかをクリアーすれば良いことになっています。
この表でも明らかなように、木製サッシは、プラスチックサッシとともに高い断熱性があると認められています。

窓及び引戸または框ドアの基準

地域区分 建具・ガラスセットの熱貫流率
W/m2
仕様基準
窓等の仕様 使用することができるガラスの熱貫流率組み合わせ事例
ガラスの組み合わせ事例 ガラス中央部の熱貫流率
W/m2
T
U
2.33
以下
1三重(材質不問) 単板+単板+単板 1.91以下
2二重(材質不問) 単板+低放射複層(空気層12mm以上) 1.51以下
3二重(一方が木製またはプラスチック製) 単板+複層(空気層12mm以上) 1.91以下
4一重(木製またはプラスチック製) 低放射複層(空気層12mm以上)
3層複合(空気層12mm以上)
2.08以下
5一重(木またはプラスチックと金属の複合製)
V 3.49
以下
1二重(一方が木製またはプラスチック製) 単板+単板 2.91以上
2二重(材質不問) 単板+複層(空気層6mm以上) 2.30以上
3一重(木製またはプラスチック製) 複層(空気層6mm以上) 3.36以上
4一重(木またはプラスチックと金属の複合製) 複層(空気層12mm以上)
低放射複層(空気層6mm以上)
単板2枚(中間空気層12mm以上)
3.01以上
5一重(金属製熱遮断構造)
W
X
4.65
以下
1二重(材質不問) 単板+単板 4.00以上
2一重(材質不問) 複層(空気層6mm以上)
単板2枚(中間空気層12mm以上)
4.00以上


地 域 区 分


ガラスの厚さを計算で求める方法


各種ガラスの許容荷重表(抜粋)

種類 呼び厚さ・構成
(mm)
許容荷重Wa
(kgf[N])
フロート板ガラス 3 180 [1765]
熱線反射ガラス 6 440 [4314]
熱線吸収板ガラス 12 1200 [11767]
強化ガラス 6 1320 [12944]
12 3600 [35303]
複層ガラス 3+A+3 230 [2255]
6+A+6 660 [6472]
12+A+12 2110 [20692]
合わせガラス 3+3 250 [2451]
6+6 720 [7060]
12+12 2300 [22555]

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